人はなぜ動くのか ― ベクトル思考で読み解く欲望と価値の力学


出版日:2025年9月3日


紹介文

私たちは毎日、無数の選択をしています。朝起きるか二度寝するか、仕事に全力を注ぐか休息を優先するか、挑戦するか安全な道を選ぶか。けれども、なぜその選択をしたのかをはっきり説明できる人は多くありません。人の行動は、気分や偶然に左右されているように見えるからです。

しかし本書は、その見方にひとつの明確な視点を提示します。人間の行動は偶然ではなく、「矢印の合成」で説明できる――それが本書の出発点です。

数学や物理学で使われる「ベクトル」は、方向と大きさを持つ矢印です。力や運動を表すための概念として生まれましたが、本書ではこの考え方を人間の心理と意思決定に応用します。欲望は私たちを押し出す矢印であり、価値観は進むべき方向を示す矢印です。家族、社会、文化、経済といった外部環境もまた、私たちに作用する矢印として働きます。そして時間は、それらの矢印を回転させ、強さを変え、人生の軌跡を描いていきます。

人が迷うのは弱いからではありません。複数の矢印が異なる方向へ引っ張っているからです。やる気が出るのは特別な才能があるからではありません。欲望と価値観の矢印が同じ方向を向いた瞬間なのです。この視点から見れば、葛藤、後悔、決断、成長といった人間の経験は、すべて理解可能な構造として見えてきます。

本書は、学生が勉強と遊びの間で揺れる理由、健康と誘惑のあいだで迷う理由、仕事において安定と挑戦のどちらを選ぶか悩む理由を、具体的な例とともに解き明かします。さらに、人間関係は矢印の交差として理解できること、価値観は人生の中で回転していくこと、自由意志とは矢印を持たないことではなく、矢印を設計できることだという新しい視点を提示します。

この本は専門書ではありません。数式も難解な理論も登場しません。それでも読み終えたとき、あなたは自分の行動や人生の選択をこれまでとはまったく違う角度から眺めているはずです。ベクトル思考は、人間理解のための新しい言語であり、自分の人生を設計するための思考の道具なのです。

人は矢印に運ばれる存在ではありません。矢印を見つめ、整え、未来の方向を選ぶことができる存在です。本書は、その第一歩となる一冊です。


目次


はじめに

第1章 ― なぜ人はその方向へ動くのか
第2章 ― ベクトルとは何か:概念と歴史
第3章 ― 欲望という矢印
第4章 ― 価値という導きの矢印
第5章 ― 行動は矢印の合成で決まる
第6章 ― 欲望と価値の出会い:一致と対立
第7章 ― 道を選ぶ:最もよく合う方向へ
第8章 ― 時間が矢印を変える
第9章 ― 人生の中で回転する価値観
第10章 ― 人間関係は矢印の交差でできている
第11章 ― 教育・仕事・社会における応用
第12章 ― ベクトル論と自由意志
第13章 ― ベクトル思考がひらく未来おわりに
謝辞