出版日:2025年11月23日
紹介文
私たちはなぜ、何も起きていないのに苦しくなるのでしょうか。朝目覚めた瞬間に胸が重くなり、夜ひとりになると不安が押し寄せる。未来の失敗を想像し、過去の後悔を何度も再生してしまう。その多くは「現実」そのものではなく、脳が作り出した物語にすぎません。
本書は、その事実から出発します。苦しみが脳によって生み出されるのなら、同じ脳の力を使って、苦しみをやわらげることもできるのではないか ―。その鍵となるのが「想像」と「記憶」です。
人は夢で泣き、映画で震え、過去の思い出で心を温めます。脳は、たとえそれが事実でなくても、本物の体験のように反応します。つまり私たちは、知らず知らずのうちに、日々「脳に騙されて」生きているのです。ならば、その性質を恐れるのではなく、味方につけることはできないでしょうか。
本書では、仮想現実や夢の科学、記憶の再構成、イメージトレーニング、自己暗示、瞑想などを通して、脳がどのように“嘘”に反応するのかをわかりやすく解説します。そして、その仕組みを応用して、自分だけの「心の避難所」をつくる方法を提案します。安全な内的空間を設計し、幸せな記憶を強化し、未来の不安を和らげる。頭の中にもうひとつの世界を持つことは、現実から逃げることではなく、現実に押しつぶされないための知恵なのです。
とくに、考えすぎてしまう人、頭が良いゆえに不安を深く想像してしまう人にとって、本書は新しい視点を与えるでしょう。思考力は敵ではありません。それを「苦しみの増幅装置」にするのではなく、「癒しの装置」に変える方法があるのです。
現実は簡単には変わりません。しかし、現実の感じ方は変えられます。脳を否定するのではなく、やさしく騙し、味方につける。
そのとき、苦しみの輪郭は少しだけ柔らぎます。
本書は、科学と想像力の交差点から生まれた、実践的な心のセルフケアの書です。あなたの脳は、あなたを苦しめる存在であると同時に、あなたを救う力も持っています。その可能性に気づくことが、最初の一歩なのです。
目次
はじめに
序章 なぜ人は苦しむのか
– 苦しみの正体
– 苦しみは脳で感じる
– 脳は「嘘」にも反応する
第1章 仮想現実とは何か
– VRとフェイクの構造
– 脳はなぜ仮想に反応するのか
– 「現実」とは何かを問い直す
第2章 夢は究極の仮想現実
– 夢の中で人は「本気で」感じている
– レム睡眠と脳内劇場
– 夢を利用する方法はあるのか
第3章 記憶と想像がつくる世界
– 想像力の仕組みと脳の反応
– 記憶を「再演」するだけで脳は癒される
– 良い記憶の活用と悪い記憶の修正
第4章 古代人も脳を騙していた?
– 瞑想、祈り、宗教的体験の本質
– 言葉がなくても人は物語を持っていた
– 「技術なき仮想現実」の痕跡
第5章 脳は「事実」より「意味」に騙される
– ストーリーによる誘導
– 感情と意味の連結
– フェイクと知っていても感動する理由
第6章 脳を意識的に騙す技術
– イメージトレーニングの科学
– 自己暗示と自己誘導
– 五感を使ったバーチャルの作り方
第7章 朝と夜に苦しみが増す理由
– 自律神経と脳の時間帯
– 「悪い予感」の正体
– 起き抜けの脳に効く思考パターン
第8章 頭がいい人はなぜ苦しむのか
– 考えすぎのメカニズム
– 不安と予測の能力
– 頭の良さを「逃げ」に使う戦略
第9章 心地よいヴァーチャル世界を設計する
– 自分だけの安全空間をつくる
– 幸せな記憶の編集術
– 「好きな人」との再会を演出する方法
第10章 「現実」を和らげる力
– 想像の力は現実を変えるか
– 脳が安らげば、体も変わる
– 現実逃避と創造的逃避の違い
終章 脳を騙して生きるという希望
– 「騙す」は悪ではない
– 主体的な脳の使い方
– 自分の脳に優しくあるということ
あとがき