善人のふりをした悪人 ― 言葉と笑顔の裏に潜む真実


出版日:2025年10月29日


紹介文

私たちは「いい人」に安心します。優しい言葉をかけてくれる人、正しいことを語る人、社会的に評価されている人。そうした存在は、疑う必要のない安全な存在だと信じたいからです。しかし本書は、その前提そのものに静かに問いを投げかけます。本当に「善人らしく見える人」は、善良なのでしょうか。

本書『善人のふりをした悪人』は、言葉と笑顔の裏に潜む偽善の構造を解き明かす試みです。ここで扱うのは、明確な悪意を持つ悪人ではありません。むしろ周囲から「いい人」と評価され、善意や正義を語る人々です。彼らは怒鳴らず、暴力も振るいません。むしろ穏やかで礼儀正しく、時には献身的にさえ見えます。しかし、その振る舞いが他者を縛り、支配し、傷つける結果を生むことがあります。本書は、その見えにくい力の働きを丁寧に追いかけます。

家庭、職場、学校、宗教、政治、メディア。私たちの生活のあらゆる場面で、「善人の仮面」は機能しています。家庭では「あなたのため」と言いながら支配が行われ、職場では「協調性」という名のもとに責任が押し付けられ、社会では「正しさ」が人を沈黙させることがあります。こうした現象は特別な出来事ではなく、日常の中に静かに存在しています。本書は、それらを極端な例としてではなく、誰もが経験しうる現実として描き出します。

本書はまた、心理学の視点から、なぜ人が善人を装うのかにも迫ります。承認欲求、恐れ、自己防衛、社会的評価への依存。善人の仮面は、単なる嘘ではなく、人が社会の中で生き延びるために身につける「適応」でもあります。そのため本書は、他人を断罪するための書ではありません。むしろ、自分自身の中にもある仮面の存在を見つめ直すことを読者に促します。

この本の目的は、人を疑うことではありません。本物の善意を守ることです。善意が尊重される社会であるためには、偽善を見抜く視点が必要です。すべてを疑うのでも、すべてを信じるのでもなく、「見極めたうえで信じる」という姿勢を育てること。それが本書の核心です。

読み終えたとき、読者は他人を見る目だけでなく、自分を見る目も変わっているはずです。善人であろうとする努力と、善人に見せようとする行為は似ていても本質的に異なります。その違いに気づいたとき、私たちはより自由で誠実な関係を築くことができるでしょう。本書は、その第一歩となる一冊です。


目次


はじめに

なぜ今、「偽りの善人」が社会を蝕むのか
あなたの隣にもいる「仮面の悪意」


第1章 善人のふりとは何か

1-1「いい人」は本当にいい人か?
1-2 偽善と本物の善意の違い
1-3 正義の仮面をかぶる者たち
1-4 善人のふりはなぜ成立するのか


第2章 人間関係に潜む仮面

2-1 優しい言葉で支配する人
2-2 「あなたのため」が支配の道具になるとき
2-3 感謝を強要する親切心
2-4 他人を利用して自分を良く見せる人
2-5 「善人」の名を使って周囲を抑え込む人


第3章 組織の中の偽善者

3-1 職場の“いい人”が組織を壊すとき
3-2 「良い上司」の顔をした支配者
3-3 内部告発者を悪人に仕立てる構造
3-4 「正義の味方」が職場を息苦しくする
3-5 清廉なリーダーの“裏の顔”


第4章 国家という仮面

4-1 善意の侵略:人道の名の戦争
4-2 国際援助という名の支配
4-3 人権外交とダブルスタンダード
4-4 国際機関を利用する善人の仮面
4-5 戦争責任をすり替える言葉の魔術


第5章 宗教・教育・メディアに見る偽善

5-1 「救い」の名による支配
5-2 学校教育と「正しさ」の押しつけ
5-3 メディアが演出する“善人”のイメージ


第6章 心理学で読み解く「仮面」

6-1 自己愛と“善人”の演技
6-2 なぜ人は偽善に惹かれるのか
6-3 善人の仮面を自分で外すには


第7章 偽善を見抜く力

7-1 言葉より行動を見る
7-2 違和感に正直になる
7-3 一貫性と透明性を見極める
7-4 本物の“善意”とは何か


第8章 私たちはどう生きるべきか

8-1 善意への失望の先にあるもの
8-2 仮面のない社会に向けて
8-3 善意を再構築する
8-4 許すという強さ
8-5 希望としての誠実さ


おわりに