投資と生活の逆説 ― 増える数字と使えるお金 その間にある社会構造


出版日:2025年9月10日


紹介文

私たちは、かつてないほど「投資」という言葉に囲まれて生きています。ニュースは株価を伝え、SNSには資産運用の話題があふれ、証券口座の画面には日々変動する数字が並びます。多くの人が資産形成に関心を持ち、投資信託や株式を保有する時代になりました。

しかし、ここで一つの素朴な疑問が生まれます。その数字は、本当に私たちの生活を変えているのでしょうか。

投資信託の残高が増え、資産額が何倍にもなったとしても、それを売却しなければ日常は変わりません。画面の数字は増えても、食卓の風景は昨日と同じままです。一方で、高配当株や利息収入のように現金として入ってくるお金は、外食や旅行といった具体的な体験へと姿を変えます。数字としての豊かさと、生活としての豊かさは、必ずしも一致しないのです。

さらに社会を見渡せば、もう一つの逆説が浮かび上がります。資産を積み上げる人は質素に暮らし、借金をしている人が豊かに見えることがある。大きな家、車、旅行 ― それらはしばしば「未来のお金」によって実現されています。資産を持つ人はお金を使わず、資産を持たない人が消費を担う。この奇妙な構図は、個人の行動だけでなく、社会全体の仕組みに深く根ざしています。

本書は、投資信託と高配当株、貯蓄と借金、ストックとフローといった対比を通して、「お金とは何か」「豊かさとは何か」という問いを見つめ直します。投資の技術や銘柄選びを解説する本ではありません。数字と生活のあいだに横たわる見えない距離を明らかにし、現代社会の経済構造と人間の行動を読み解く試みです。

お金は増やすためだけに存在するのか。安心のために貯めるべきか、今の生活を豊かにするために使うべきか。それとも次の世代に残すべきなのか。

本書は答えを与えるための本ではありません。読者自身が「お金をどう生かすのか」を考えるための一冊です。数字の向こう側にある生活を見つめ直すとき、投資は単なる金融行為ではなく、人生そのものを映し出す鏡となるでしょう。


目次


はじめに 数字とお金のあいだにある問い


第1部 投資と数字の世界


第1章 投資信託という「数字の器」

  • 含み益とは何か
  • 通帳とモニターの数字が意味するもの
  • なぜ人は数字を見て一喜一憂するのか

第2章 高配当株と「現金のリターン」

  • 配当という生活への直接的なつながり
  • 株価の上下と配当の安定性
  • 再投資か消費か―選択の自由

第3章 投資スタイルのスペクトラム

  • 成長志向型と安定志向型
  • 「今の楽しみ」と「将来の安心」
  • 投資信託と高配当株の間にある多様な商品

第2部 借金と消費の社会構造


第4章 信用が生む「未来のお金」

  • 借金して豊かに暮らす人々
  • 見かけの豊かさと実態の不安定さ
  • 信用社会の逆説

第5章 ストックとフローの逆転現象

  • 堅実に暮らす資産家
  • 派手に暮らす債務者
  • 「人は見かけによらない」という経済的現実

第6章 社会全体の構造と投資・借金

  • 富を蓄える人と使う人の共存
  • 投資信託の数字と借金の現金化
  • 世界の国々での違い(米国・日本・新興国)

第3部 逆説を生きるために


第7章 お金の目的と人間の行動原則

  • 投資の本質は何か
  • 「使えるお金」が人生を変える
  • 行動とリターンの一致

第8章 数字から生活へ―お金をどう生かすか

  • 投資を取り崩す難しさ
  • 生活に還元するための工夫
  • 老後と相続、そして次世代への継承

おわりに 投資と生活をつなぐものは何か