出版日:2025年9月12日
紹介文
私たちは、毎日ことばを使っています。挨拶を交わし、考えを伝え、感情を分かち合い、世界を理解するために ―。しかし、その「ことば」が静かに変わり始めていることに、どれほどの人が気づいているでしょうか。
いつのまにか、私たちの会話にはカタカナ語があふれています。ニュース、広告、学校、職場、行政 ― 社会のあらゆる場面で、意味が曖昧な外来語が当然のように使われています。便利で、格好よく、現代的に聞こえるそれらの言葉は、確かに一見すると無害です。けれど、その背後で、日本語が本来持っていた豊かな表現や感性が、少しずつ見えにくくなっているのも事実です。
日本語は、単なる情報伝達の道具ではありません。季節の移ろいを映し、心の機微を表し、人と人の距離を繊細に整える ― 文化そのものを宿した言語です。「いただきます」「おかげさま」「もったいない」「わび」「さび」これらの言葉には、他の言語に置き換えられない世界観が息づいています。
本書は、外来語を否定するための本ではありません。問いかけているのは、もっと根本的な問題です。私たちは、自分たちの言葉をどれほど大切にしているのか。便利さや流行に流されるまま、思考の手間を省いてはいないか。そして、日本語を次の世代へどのような形で手渡そうとしているのか。
歴史を振り返れば、日本語は幾度も危機を乗り越えてきました。言文一致運動、戦後の社会変化、そして国際化の波。そのたびに、日本語は失われるのではなく、新しい姿を模索しながら生き延びてきたのです。今、私たちは再びその転換点に立っています。
本書では、外来語氾濫の問題点を見つめ直し、日本語の言い換えの可能性、家庭や教育、メディアやネット社会での実践、そして世界に向けた日本語の新しい役割を丁寧に考えていきます。大きな改革ではなく、日常の小さな選択から始める日本語再生の道が示されています。
言葉を守ることは、文化を守ること。
文化を守ることは、未来を守ること。
この本は、声高に主張するための本ではありません。静かに、しかし確かに問いかける本です。あなたが今日使う一つの言葉が、明日の日本語を形づくるのだということを。今こそ、ことばを取り戻すときです。
目次
はじめに
奪われた言葉と、私たちが失いかけているもの
第1章 本来の日本語が持つ美しさと力
- 言霊と美意識―言葉に宿る魂
- 季節とともに生きる表現
- 敬語に込められたやさしさと距離感
- やまとことばという、響きの文化
第2章 外来語の氾濫がもたらすもの
- 日本語が失われる危機
- 思考の浅さと表現力の後退
- 文化の輪郭が薄れていく
- 外来語を無批判に受け入れる心理
第3章 外来語を日本語に言い換えるという挑戦
- 日常語の見直し―“カタカナ”から“ことば”へ
- ビジネス・報道の言葉を正す
- 行政・公共の場での日本語化の提案
- 新しい概念こそ、日本語で創り出す
第4章 世界とつながる日本語の可能性
- 柔道と空手―文化ごと伝わった日本語
- 「おもてなし」「わび・さび」の再評価
- 翻訳できない日本語をそのまま届けるには
- 日本語を「世界の中のことば」に育てる方法
第5章 歴史に学ぶ、日本語を守る知恵
- 明治の言文一致運動とその成果
- 戦時下の外来語排除とその反省
- 他国に見る言語保護政策の成功例
- 現代の言語純化運動が示す希望
第6章 私たちの暮らしから言葉を取り戻す
- 家庭が育む「言葉の感性」
- 教育現場が担う日本語の未来
- メディア・出版が果たすべき責任
- ネット社会で「日本語らしさ」を取り戻す
第7章 ことばと共に生きるという決意
- 言葉を守ることは、文化を守ること
- 敬意をこめて話すという習慣
- 言葉を選ぶという責任
- 次世代へ、日本語の力を受け継ぐために
おわりに
言葉を取り戻すことは、自分自身を取り戻すこと